news.yahoo.co.jp 見える貧困と見えない貧困|“ことば”を旅する連載・第28回(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

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見える貧困と見えない貧困|“ことば”を旅する連載・第28回(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース

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クーリエ・ジャポン

日本の17歳以下の子どもの貧困率は13.5%(2019年厚労省)で、「7人に1人が貧困」とされている。「子どもの貧困」という言葉が頻繁に聞かれるようにはなったものの、実感できていない人が多いのも現実だ。

赤黒い土壌から生まれたヒップホップ

ラップの技を競い合わせ、将来のスーパースターを発掘しようという、最近見た米国の番組がとても面白くて、やはり米国は今でもたくさんの才能を生み出し育む土壌を持つ国なのだなと改めて感心した。 しかしその土壌は決して美しい緑色の草原などではなく、インディオたちに取って代わった白人の住人たち、訳あって世界中から集まってきた移民やアフリカから強制連行された黒人たち、その長きにわたるかかわりの中で流れた汗と涙と血と唾とが染み込む赤黒い土壌なのだ。 赤黒い土壌から芽生え、そこから抜け出そうと天に伸びる双葉は力強く、生命力に満ち溢れた美しい花を咲かせるのだろう。 特にヒップホップの世界は、いまだに一部の白人社会から不当な差別を受け、貧困・犯罪といった日常に甘んじ、屈折した幼少期を運命づけられる子どもたちの居場所として機能する側面を持っている。 番組に出演していた、生まれて9ヵ月で母親が家を出て行き、男手一つで育てられたという若きラッパーがこう言っていた。 作品に夢中になれるのは現実逃避だから。 痛みを美しいものに変えられるんだ。 人は何かを失ったとき10倍良いモノを得る。

貧困とは何か

何年か前に沖縄県から「沖縄の子どもの貧困が問題になっている。支援のために協力してほしい」という依頼があった。その時、正直「貧困??」と、たくさんの「?」が頭の中にあふれた。21世紀の日本で、「貧困」という言葉の響きを耳にするとは、思いもよらなかったからだ。 「貧困」について調べてみると「教育・飲食・住居・仕事・医療など、社会生活に必要な条件を満たせないこと」などの定義を国連が定めていることを知った。貧困にはさらに2種類の定義があり、ひとつは「絶対的貧困」と言い、これは人間らしく生活するための必要最低限の条件が揃っていないことを指す。多くの人が「貧困」という言葉を聞いた時に描くイメージはこの絶対的貧困にあたるのだろう。 1985年にアフリカ難民救済を目的とし、ミュージシャンのボブ・ゲルドフが中心となって立ち上げた「ライブエイド」という大規模のチャリティーコンサートが、英国と米国で同時に行われ、世界中で衛星生中継されたことがあった(その他の会場でもコンサートが行われ、多くのアーティストが出演した)。この時に「貧困」という現実を世界中が直視し、当時の世界における「貧困」の定義が認識され、良くも悪くも持てる者と持たざる者の格差を浮き彫りにする一大イベントになった。 莫大な寄付金が集まったようだが、結局、金銭トラブルが起きたり、末端まで支援が届かなかったり、残念ながら「貧困問題はお金だけでは根本的には解決できない」ということも我々は知ってしまった。 絶対的貧困というと、飢餓問題や政治的な問題を抱え、虐げられた人たちが暮らすアフリカ諸国などの国々をイメージするだろう。加えて、独裁者や原理主義的な宗教観、人種間の優劣を根拠にした差別が、大衆の自由を拘束し貧困へと追いやるケースも世界中に存在する。 このような地域では一握りの富裕層が富と権力を独占し、多くの貧困層をコントロールしている場合が多い。クーデターや内戦で国を追われ、難民としてさらに貧困の深淵に押しやられるケースも後を絶たない。 「沖縄で子どもの貧困が問題になっている」と聞いた時の違和感は、このような絶対的貧困と、自分が知る沖縄とが結びつかなかったからだ。自分はコンサートツアーで、南米や東欧の貧しい国々も周ったことがある。ニカラグアでは最貧層の子どもたちになんとか教育を受けさせたいと奮闘する現場も見学させてもらったし、中南米には貧困に打ち勝つ手段としての犯罪が日常であり、自分も何度か危険な目にさらされたこともある。 そういったゼロメートル地帯を少しは知っている身として、沖縄では少なくとも自分が知る「貧困」を感じた経験はない。正直、沖縄県からの依頼に、はじめはまったくピンとこなかった。

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