米軍撤収から1カ月 貧困と不安が覆うアフガン
米軍撤収から1カ月 貧困と不安が覆うアフガン

【シンガポール=森浩】アフガニスタン駐留米軍の撤収が完了し、30日で1カ月となった。「悲願」だった外国軍撤収が実現し、イスラム原理主義勢力タリバンは暫定政権を樹立したが、経済は逼迫(ひっぱく)し、国全体を貧困と不安が覆っている。安定政権を築くという困難な課題にタリバンがどう取り組むか見えてこない中、国内では極端なイスラム法解釈に基づく恐怖政治が広がる兆しがある。
タリバンは7日に暫定政権閣僚を発表したが、タリバン幹部がポストを独占した。最高指導者のアクンザダ師は旧タリバン政権(1996~2001年)同様、「イスラム法に基づく統治」を打ち出したが、個別の政策はいまだ不明な部分が多い。
喫緊の課題が、国際支援に依存していたアフガン財政の立て直しだ。タリバンによる8月15日の首都カブール制圧以降、欧米諸国や国際通貨基金(IMF)は支援を停止。米国はアフガン政府が米国内に保有している資産90億ドル(約1兆円)の大半を凍結した。
既に国内では貧困が拡大し、国連の世界食糧計画(WFP)は食料不足などで、1400万人が飢餓の瀬戸際に立たされていると警告した。十分な食料を確保できている家庭は全体の5%にすぎないという。病院の閉鎖も相次ぎ、医療体制も崩壊の危機に直面する。
タリバンは米国による資産凍結の解除を求めた上で、中国やロシア、パキスタンなどからの援助に期待する姿勢を見せている。ただ、各国ともタリバンが他のテロ組織との関係を遮断するか見極めている最中で政権承認すら及び腰だ。
政治が停滞する中、指導部の指示か現場司令官や戦闘員の独断かは不明だが、旧タリバン政権同様の恐怖政治が復活しつつある。西部ヘラートでは今月25日、誘拐事件の容疑者とされる4人の遺体が公衆の前でクレーンでつるされた。地元指導者は「犯罪を防ぐための見せしめだ」と説明している。農村部などでは戦闘員がアフガン政府軍兵士や警察官を殺害する例が相次いだ。
タリバン内部では統治方針をめぐって対立が深刻化しているとの情報が絶えない。一時は穏健派とされるバラダル第1副首相代行が強硬派に殺害されたとの噂も流れた。指導部の足並みがそろわない中、末端の行動を制御できるか不明で、国内の混乱は容易に収束しそうにはない状況だ。
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