米アフガン撤退 治安と貧困の対策を急げ
米アフガン撤退 治安と貧困の対策を急げ
米軍が「テロとの戦い」を掲げて駐留していたアフガニスタンからの撤退を終えた。アフガンではまだ政権が樹立しておらず、当分の間、予断を許さない情勢が続く。国際社会はこの混乱を放置してはならない。
目下、実権を握るイスラム主義組織タリバンに求められるのは、悪化した治安を回復させ、国民が安心して暮らせる社会づくりだ。国外退避を望む人々の安全も保障してほしい。
それにしても米軍の撤退作戦は拙速だった。自ら設けた撤退期限に固執したことが首都の空港周辺で大混乱を引き起こした上、テロを誘発し、米兵や民間人ら180人以上が死亡した。その結果、多くの外国人やアフガン人協力者が国外に退避できず、留め置かれたままだ。
バイデン大統領は「米国にとって正しく賢明で最善の選択」と自らの決断を正当化した。撤退自体は間違っていないだろうが、情勢を見誤り、多数の人命が失われた。撤退の在り方は国内外で批判を浴びている。
バイデン氏は、テロを起こした過激派組織に対しアフガン国外から掃討作戦を続ける意向も示した。ここで熟慮してほしいのは、再び報復の連鎖に陥り、他の地域に波及する事態を望む国などないということだ。何より軍事力に傾斜したこれまでの介入がアフガン国内で反米感情を高め、結局、タリバンの勢力回復を後押ししてきたことを省みるべきだろう。
タリバンは勢力を拡大させながら各地の刑務所を占拠し、受刑者を放ってきた。この混乱に乗じて過激派組織の戦闘員も脱出したとされる。今後の治安を考える上で不安材料だ。タリバンはテロ組織との絶縁を行動で示さなければならない。
テロの抑止を目指すには、その土壌となっている貧困に目を向け、解消を図ることが不可欠だ。アフガンは長年の軍事紛争や混乱に加え、気候変動による干ばつで水や食料が慢性的に不足している。さらに新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、人々の生存が脅かされる。
国連のグテレス事務総長はアフガン国民のほぼ半数に人道支援が必要と指摘し、「人道的な大惨事が迫っている」と国際社会に訴えた。国連機関によると今年、居住地を追われた国内避難民が約55万人増え、国外に逃れる人は年末にかけて50万人を超える可能性もある。
荒廃したアフガンの大地が再生し、人々の生活が安定に向かえば、国外の私たちにとってもテロなどの脅威の低減につながる。アフガンを決して見捨てない。この認識を国際社会で再度共有し、そのメッセージを出し続けることが肝要だ。
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