「不平等」はなぜ生まれる?数字とデータで考える格差社会【ウェルビーイング特集 #28 格差】 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

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「不平等」はなぜ生まれる?数字とデータで考える格差社会【ウェルビーイング特集 #28 格差】 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

by 木原優佳
9-12 minutes

飲食店の倒産や失業者についての報道のあとに、「株価最高値更新!」のニュースが流れてくる──コロナ禍のニュース番組を見て、言いようのない違和感を覚えたことがある人は少なくないのではなかろうか。世界のどこかで富はどんどん増え続けているのに、それが最下層の人までわたることはない。そんな格差の現実が、この社会にはある。

今回の記事では、そもそも格差とは何なのか、何が問題なのかという問いを出発点に、格差に対し私たちに何ができるのかを考えていきたい。

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01. 格差とは

格差社会ってどんな社会?

格差社会とは、所得、地域、ジェンダー、年齢、民族、障害、性的指向、階級、宗教などが原因で、アクセスや機会、結果が決定づけられる不平等な社会のことをいう。格差社会においては、富める者はさらに富み、貧しい者はさらに貧しくなりその差が大きくなってしまうのが特徴だ。

また、生活保護家庭で生まれた子どもが将来生活保護を受けることになりやすかったり、両親が大学に行っていない子どももまた大学に行かない選択をしやすくなったりすることがある。このように格差には、世代を越えて固定化・再生産されやすいという特徴もある。

国連連合広報センターによると、過去30年間で、世界の10億人以上が貧困から脱出しているものの、貧しいほうから数えて半数の人々が所得に占める割合は1990年以降、ほとんど増えていない。世界人口の3分の2以上が所得と資産の格差拡大に直面しており、これが持続可能な開発の見通しを大きく損なっている(※1)

格差の種類・データで見る格差の現状

格差というと経済格差を連想しがちだが、実際にはさまざまな種類の格差が複雑に関係しあっており、他の格差を助長・再生産している。以下が、格差の種類の一例だ。

所得格差

所得格差とは、言葉の通り所得における格差のことだ。所得格差を示すときには、ジニ係数という指標がよく使用される。ジニ係数は0~1の数字で表され、完全な所得分配ができている場合は0、1つの世帯が所得を独占している場合は1となる。つまり、1に近づけば近づくほど不平等度が高いということだ。

2016年のデータ(※2)によると、日本のジニ係数は0.339、先進国の平均が0.297、新興国の平均が0.462であった。日本の所得格差はアメリカの0.391、イギリスの0.351を下回るものの、ほとんどの先進国よりも大きいのが現状だ。

日本では、国民の生活意識として、世間一般からみると中流であるという意識が強く、その様態は「一億総中流」であると言われてきたが、1990年代以降低成長時代に突入し、2000年代前後から「格差・貧困」を巡る議論が活発化している(※3)

以下は、日本における当初所得(再分配が行われる前の所得)と、社会保険料等による再分配が行われた後の再分配所得のジニ係数、そして再分配による不平等の改善度を示した図(※4)だ。再分配後のジニ係数は1990年から2017年までほぼ横ばいで推移しており、社会保障などによる再分配が行われた後の不平等度には大きな変化がないことがわかる。

一方、当初所得ジニ係数は1999年からほぼ右肩上がりに上昇を続けている。ジニ係数は1に近づけば近づくほど不平等度が高まるわけなので、所得分配の不平等化が進んでいることがわかる。

所得再分配によるジニ係数の改善の推移

Image via 厚生労働省

教育格差

教育格差とは、生まれた家庭や地域、周囲の環境によって受けられる教育に差が生じることを示す。たとえば、親の収入が低い家庭の子どもはそうでない家庭の子どもに比べて塾などに通いづらく、結果として学力にも差がうまれてしまうことがある。

世帯の所得と子どもの学力には明確な関連があることがさまざまなデータで示されており、たとえば、平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)(※5)では、世帯所得が低いほど国語と算数の正答率が低いとの結果が得られている。

また、子どもの教育、職業に対する親の意欲の度合いによって、子どもの意欲や希望がある程度決定されてしまう「インセンティブ・デバイド」という現象があることが知られている。

情報格差

情報格差はデジタル・デバイドとも呼ばれており、「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差 」のことである。具体的には、インターネットやブロードバンド等の利用可能性に関する国内地域格差を示す「地域間デジタル・ディバイド」、身体的・社会的条件(性別、年齢、学歴の 有無等)の相違に伴う ICT の利用格差を示す「個人間・ 集団間デジタル・ディバイド」、インターネットやブ ロードバンド等の利用可能性に関する国際間格差を示す「国際間デジタル・ディバイド」等の観点で論じられることが多い(※6)。 

日本において、インターネットの利用状況(※7)に大きく影響を及ぼしているのは、年齢や世帯年収である。令和2年のインターネットの利用状況を見ると、6~69歳までの層で男女ともほぼ80%以上がインターネットを利用しているのに対し、70~79歳では男性68.5%、女性51.7%の利用率に。さらに80歳以上では、男性35.8%女性19.9%の利用率になる。

▽男女、年齢階層別のインタ―ネットの利用状況(令和2年)

男女年齢別インターネット利用率

Image via 総務省

また、世帯年収別のインターネット利用状況(※8)を見てみると、世帯年収400万円以上の世帯で86%以上の利用率を誇るのに対し、200~400万円未満では73.6%、200万円未満では59.0%の利用率となっている。

▽世帯年収別インターネットの利用状況

世帯年収別インターネット利用率

Image via 総務省

地域格差

地域格差とは地域間で生じる格差のことで、所得や教育、学力、就職、生活水準や情報に接する機会など、さまざまな基準においての格差を含む。

たとえば、 2018年の東京都の一人当たり県民所得(※9)を比べてみると、一位は東京都の541.5万円。2位である愛知県の372.8万円とも大きな差があることがわかる。一方、最下位は沖縄県の239.1万円で、東京都の2分の1以下である。

日本では戦後、三大都市圏を中心とした都市圏と、農漁村を含む地方圏との間での所得格差が続いてきた。こうした所得格差と人口移動の間には密接な関係があり、より所得の高い魅力的な地域に、若年層を中心に地方からの人口が流出してきたと考えられる(※10)

男女格差

男女格差(ジェンダー格差)は、性別の違いによって就業機会や所得、置かれる状況などに差が生じることを示す。

日本のジェンダー・ギャップ指数(スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が独自に算定した男女格差を測る指数)は、153か国中121位で、政治・経済分野の値が低く、教育分野においては高等教育在学率が低い状況である(※11)

医療格差

医療格差とは所得や地域といった要因から受けられる医療に格差が生じている現象のことだ。

都道府県(従業地)別にみた人口10 万人あたりの医師数(2018)を見てみると、徳島県が329.5 人と最も多く、埼玉県が169.8 人と最も少ない(※12)。また、同じ都道府県内でも本島と島しょ部では医師数に格差が生じている(※13)

島しょ部では、設備の整った病院で検査を受けたい場合、患者が都市へ移動しなければならず、資金や労力を多く費やすこととなってしまうという格差もある。

健康格差

個々人の置かれた社会的環境や経済的状態によって健康状態に差がうまれてしまうこと。たとえば、教育年数が短い人は、教育年数が長い人より、死亡リスクが約1.5倍高く、所得が少ない人は、所得が多い人より、死亡リスクが 2倍近く高いというデータがある(※14)

要因はさまざまだが、まず、収入が少ないと健康維持に必要な物やサービスを十分に購入できなかったり、所得の少ない人では受診控えが多かったり、健康診断を受けていなかったりすることから病気リスクが上がることが考えられる。

世代間格差

世代間格差とは、生まれた年によって年金や健康保険などの社会保障制度に伴う負担と見返りのバランスが大きく異なることである。日本の国民年金は、給付に必要な費用を現役世代が負担する「賦課方式」をとっているが、この方式の場合、少子高齢化によって受給者が増加すると現役世代の負担が重くなり、負担額に応じた給付を得られなくなる懸念がある。

1955年以降に生まれた人は、一生を通じて受け取る社会保障サービスの「受益」よりも、保険料などの「負担」のほうが多くなることが知られている(※15)

02. 格差はなぜ問題か

格差により不平等がうまれると、以下のような不具合が生じる可能性がある。

  • 水、衛生、医療など基本的サービスへのアクセスが難しくなる・教育や体験の機会が得られなくなる
  • 個々の意欲がくじかれる
  • 差別や虐待が助長される
  • 地域社会から孤立しやすくなる
  • 経済的・社会的な移動が停滞し、経済成長が阻害される
  • 人々に不安が植えつけられる
  • 制度や政府に対する信頼が低下する
  • 社会的不和が高まる
  • 暴力や紛争が起こりやすくなる
  • 移民排斥や極端なナショナリズムを助長する

資本主義の世の中において、ある程度の格差は個人及び社会の活力の源泉となる。たとえば、「もっと給料がアップするかもしれない」と思えるからこそ仕事に打ち込めるし、一攫千金も夢ではないと思えるからこそ、イノベーションを起こそうとも思えるわけだ。

しかし、行き過ぎた格差は、世の中に不安やあきらめのムードをまん延させる原因となる。格差は「固定化」「再生産」されやすいため、社会階層は「見えない身分」のように固定化される。これにより、世の中から流動性が失われ、社会全体が停滞してしまうのだ。

実際、近年、多くの先進諸国では、過去30年で富裕層と貧困層の格差が最大となる一方、中長期的な成長率が低下しているとされる(※16)

OECD(経済協力開発機構)は、「格差の拡大は、社会の団結に影響を及ぼすだけでなく、長期的な経済成長にとっても有害である」ことを指摘(※17)。同機構は、「ある程度許容範囲の格差」と「過度の格差」の境目を示す指標として「相対的貧困率」を用いて、格差是正を目指している。

注意点:格差と貧困を分けて考える

先ほど、資本主義社会においては、ある程度の格差が社会の活力を生み出すと述べたが、ここでひとつ注意しなければならない点がある。格差を容認するか是正するかの議論を進める際には、似たような概念として混同されがちな「格差と貧困」を分けて考える必要があるのだ。

格差が示すのは、あるものとあるものの間にある「差」だ。AとBの間に違いがあれば、格差があると言えるため、年収600万円の人と年収200万円の人の間にも、年収1,000万円の人と800万円の人の間にも同じように格差が存在していることになる。

一方、貧困が示すのは「ある水準に満たない状態」だ。貧困には人として最低限の生活が満たされていない状態を示す「絶対的貧困」と、居住する国や地域の水準と比べると比較的貧しいとされる「相対的貧困」2つの種類があるが、それぞれの貧困の定義は以下である。

  • 絶対的貧困

教育、仕事、食料、保険医療、飲料水、住居、エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない状態──UNDP(国連開発計画)の定義(※18)

  • 相対的貧困

等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の貧困線(中央値の半分)に満たない世帯──厚生労働省より(※19)

相対的貧困は、絶対的貧困のようにすぐに命に関わらないことも多いが、相対的貧困による経済的困窮を背景に、教育や体験の機会に乏しく、地域や社会から孤立し、さまざまな面で不利な状況に置かれてしまう傾向にあるため、各国で深刻な課題として認識されている。SDGsの第1ゴール:1.2には「 2030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、 女性、子どもの割合を半減させる。 」との記述があり(※20)、あらゆる次元の貧困、つまり途上国の絶対的貧困だけでなく先進国の相対的貧困も解決すべき問題として捉えられていることがわかる。

これらを踏まえて、以下の図を見てみよう。

格差と貧困

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