コロナ禍で深刻化する子供の貧困問題と解決するために企業にできること

 

コロナ禍で深刻化する子供の貧困問題と解決するために企業にできること

2021.07.30  

子どもの貧困問題が、このコロナ禍でより深刻になっている。近年のデータでは子どもの貧困率は13.5%であり世界的に見ても高い割合とされる。貧困は子どもの心身ともに健やかな成長に問題があるといわれる中、支援が不可欠だ。国内でも多くの企業が子どもの貧困問題に対する支援を行っている中、今回は、3つの新しい取り組みについて紹介する。

子どもの貧困がコロナ禍で深刻化

厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)によれば、相対的貧困の状態にある18歳未満の子どもの比率である貧困率は、2018年時点で13.5%となった。

前回の2015年調査から0.4ポイント改善したものの、依然として子どもの約7人に1人が貧困状態にある。これは、世界的に見ても高い水準といわれている。

またコロナ禍でさらに貧困が拡大しているのではと見られている。

2021年3月に実施された内閣府主催のオンラインイベント「STOP子供の貧困。企業が行うSDGs達成に向けたアクション~いま始めるべき、コロナ禍での取組とは」のレポートによれば、特定非営利活動法人キッズドア理事長の渡辺由美子氏は、「一人親世帯だけでなく二人親世帯でも子供の貧困が広がっている」ことを報告し、「コロナウイルス感染拡大による影響として、必要な食料を買えない、家賃・電気・ガス・水道などの支払いができないことがあった家庭もあるなど、貧困が深刻化している」と指摘した。そして「困窮について声をあげられない人たちも含めて、支援の手を差し伸べる必要がある」と述べている。

このように、コロナ禍でより深刻化する子どもの貧困を受け、各社は支援活動を実施している。

「経済的困窮世帯であるほど子どものむし歯が多い」現状を受けたプロジェクト

そんな子どもの貧困に取り組む企業の一つに、ライオン株式会社がある。

2021年6月9日(水)から、オーラルケア機会の格差是正を目的とし、2030年のSDGs目標「全ての人に健康と福祉を」に向け「インクルーシブ・オーラルケア」をスタートした。

その一つとして、子どもたちの自己肯定感の向上に貢献する「おくちからだプロジェクト」を推進。「認定NPO 法人フローレンス」「認定NPO 法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」と協定を結び、子どもたちの食を支える「こども食堂」や「こども宅食」を通じ、「歯と口の健康」をテーマにした体験プログラムを開発して、子どもたちの自己肯定感の向上に貢献していく。

●貧困とむし歯との関係

生活困窮世帯は、そうでない世帯に比べ、子どものむし歯が多い傾向にあることが分かっている。さらに、経済的困窮家庭で育った子どもたちは、そうでない子どもたちと比べ、他者から褒められること、親以外の大人とのコミュニケーションをとることや、歯みがきなどのライフスキルの獲得体験が不足しており、自己肯定感が著しく低いことが特徴といわれている。

このことから本取り組みでは、さまざまな環境下の子どもたちに、楽しく学びながらオーラルケア習慣の重要性を感じてもらえるよう、ダンスやクイズなど非認知能力を高めるコンテンツを展開する。

コンテンツを実際に子どもたちが体験しているシーンをまとめた動画(ナレーション:上戸彩さん)

現在、ダンスを通じてオーラルケアの習慣化と感情表現を育むプログラムとして、子どもたちにオーラルケア習慣を呼びかけるダンス動画が3つ公開されている。本動画は、エイベックス・エンタテインメント株式会社(楽曲制作・ダンス)、ノアド株式会社(映像)、公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(口腔衛生)と協力して制作された。

また「歯ごろく」という人生の様々なエピソードを通じて、お口と健康の大切さに気付きを促すすごろくゲームや、毎日のケアに欠かせない歯ブラシを自分好みにデザインできる「歯ブラシデコレーション」というコンテンツも展開している。

子どもの貧困によるむし歯への影響やコロナ禍の中、どのような想いで当プロジェクトを進めているのか。ライオン株式会社 ビジネス開発センター UXデザインチーム プロジェクトリーダーの樫田航太郎氏にインタビューを行った。

ライオン株式会社 樫田航太郎氏

「歯みがき行動は、全身の健康と密接に関係しており、人が本来持っている“健やかに生きる力”を引き出し、育む、非常に重要な習慣です。なかでも、幼少期の歯みがき習慣の定着が健康な人生を過ごす上で基本的かつ大切な生活習慣になると考え、当社では1932年から正しい歯みがき方法の指導のために『学童歯磨教練体育大会』」を開始しています。子どもの歯みがき習慣化へ向けた普及啓発活動にいち早く着手しており、その後も『全国小学生歯みがき大会』として発展を続け、今年で78回目を迎え、アジアにも展開しております。

日本では7人に1人の子どもが相対的貧困状態にあるといわれ、そういった家庭の子どもはむし歯が多い傾向にあることも分かってきています。また、さまざまな家庭環境の中で、歯みがき習慣がない子どもや、食べ物を噛むことが困難な『口腔崩壊(むし歯が10本以上等)』の子どもがいることが分かりました(※1)。まだまだ歯みがき習慣が定着できていない子どもたちがいることは当社にとってショッキングな事実であり、居ても立っても居られない想いに突き動かされ、新たな取り組みを開始することにしました。プログラムを実施できる団体や参加企業を募り、オンラインツールなども活用し、幅広く展開をしてまいります」

※1全国保険医団体連合会が2018年に発表した報告書によると、調査に回答した3800校のうち実に4割強もの小学校に、口腔崩壊の児童がいた。
https://hodanren.doc-net.or.jp/news/teigen/2018shcsvy.pdf

学習機会の提供で子どもの貧困による教育格差を埋める

子どもの貧困は、教育格差を生み出す一つの要因といわれていることを背景に、各企業が子どもに学習機会を提供している。

先日は、株式会社すららネットが、認定特定非営利活動法人カタリバが行う、生活困窮・不登校・外国籍など、さまざまな環境にハンデを抱える子どもたちへの支援事業に賛同し、「すらら」を提供することを発表した。

「すらら」とはAI×アダプティブラーニング教材で、小学校から高校までの国語、算数/数学、英語、理科、社会 5教科の学習を、先生役のアニメーションキャラクターと一緒に、一人一人の理解度に合わせて進めることができるもの。初めて学習する分野でも一人で学習を進めることができる特長がある。

代表取締役の湯野川孝彦氏は、すららネットはICTを活用して教育格差の解決を目指しており、「貧困」が教育格差を生み出す一つの要因と考え、これまでも国内外で経済的に困難な家庭への学習機会の提供に取り組んでいたという。例えば、東日本大震災被災地域へすららを提供したり、コロナ禍で学校が休校になった際にはすららの無償提供も実施してきた。そうした中、今回カタリバが実施する子どもたちへの支援事業に賛同し、すららを提供することにした。

湯野川氏は「今後も、学習機会の提供を通じ、子どもの学力や生きる力の向上を目指し、格差是正に向け取り組んでまいります」と述べる。

貧困のほか広く子どもの問題を解決する事業を支援

子どもの問題は、貧困だけに限らない。出産・子育て、教育、虐待といった数々の問題がある。

2021年3月、株式会社ミクシィの「家族アルバム みてね」は、広く、子どもやその家族を取り巻く社会課題の解決を目的に、2020年4月より活動している「みてね基金」の第二期の助成先20団体を決定し、総額5億9,774万円の助成を行うことを発表した。

みてね基金は、主に「難病・障がい」「教育」「貧困」「出産・子育て」「虐待」の領域での課題解決に取り組む団体の活動支援を行う目的で活動しており、取締役会長の笠原健治氏が個人として10億円を資金提供している。

第一期は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、困りごとを抱える子育て家庭に支援活動を行う団体に資金提供を行った。また海外での二度の助成活動を実施してきた。

今回の第二期は、「すべての子どもやその家族が幸せに暮らせる世界」の実現を目指して、中長期的な視点から今後を見据えた「イノベーション助成」と「ステップアップ助成」の二つの助成プログラムを実施。また伴走支援などの非資金的な支援も提供する。

例えばイノベーション助成では、特定非営利活動法人キッズドアが行う日本全国の海外にルーツのある子育て家庭への多言語情報の支援サポート事業に5,520万円、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが行う貧困の世代間連鎖を断ち切るための子どもの「体験格差」解消・事業に対して約9,984万円を助成する。

株式会社ミクシィ 取締役会長 笠原健治氏

笠原氏は第二期発表に寄せたコメントの中で、「みてねの立ち上げ・運営を通して、『家族の絆を深めていくこと』『子どもへの愛情を世代を越えてつないでいくこと』の価値の大きさにあらためて気づきました。」と述べ、「団体の活動を後方支援することで、本当に必要な支援が継続的に行き届く仕組みができればと願っています。困難な時はお互いに助け合う、持続可能な社会づくりに貢献できればと考えています。みてね基金では、子どもとその家族に関わる課題の解決を継続的に行えるよう、今後も全力で支援してまいります。そして、すべての子どもやその家族が幸せに暮らせる世界の実現を目指していきます」と述べている。

世界的に高いといわれている日本の子どもの貧困率。そしてコロナ禍はさらなる影響を及ぼしている。貧困のほか、子どもの問題は多岐に渡る。日本企業が進める取り組みが積み重なることで、現状改善に光を灯すことを願いたい。

【参考】
ライオン「インクルーシブ・オーラルケア」スペシャルサイト
すららネット「すらら」
ミクシィ 家族アルバム みてね「みてね基金」

取材・文/石原亜香利

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